2026年4月2日、ワシントンホテル(4691)に買いが殺到しました。きっかけは、アパホールディングスが1日付で大量保有報告書を提出し、アパホテル、アパリゾートとの共同保有で5.08%を握っていることが分かったからだ。保有目的は「純投資」。市場ではこれが材料視され、朝方からストップ高買い気配となり、9時台には「物色人気集中」と報じられました。
ここで面白いのは、「純投資」という言葉の受け止め方です。
「純投資」は、少なくとも現時点で経営参加を前面に出す届け出ではないという意味合いが強い。ですが、「何となく買った」という意味ではもちろんありません。むしろ、ホテルを日々運営しているAPAだからこそ、ワシントンホテルの値付けが安いと気づいた、と読むほうが自然といえます。
APAグループは以前から、苦しい局面ではFC転換や買収、M&Aが拡大の好機だと語ってきたうえ、都心集中出店や直販「アパ直」を収益の核にしてきた過去が有ります。
リーマンショック後に暴落した東京都都心の土地取得を強めた流れも有名です。
つまり、宿泊需要、立地、客室単価、直販比率といった「ホテルの稼ぐ力」を、自社の現場感覚で判断できる会社なのです。
実際、ワシントンホテルは数字だけ見ても「安い」と言いやすい局面でした。
4月1日時点の時価総額は約167億円、予想PERは5.64倍、PBRは1.34倍、予想配当利回りは2.9%。一方で、2026年3月期第3四半期累計の売上高は189.59億円、営業利益は35.53億円と大きく伸び、2月には通期経常予想を24.6億円から32.2億円へ上方修正し、期末配当予想も26円から40円へ引き上げている。利益は増える、配当も増える、それなのにPERは5倍台。ホテルのプロが見て「まだ安い」と判断しても不思議ではありません。
ただし、ここで「APAがそのままワシントンホテルを取りに行く」と決めつけるのは早いです。
ワシントンホテルは2月に藤田観光との業務提携を発表しており、会員基盤の相互送客や株主優待の相互利用を検討している。発表時点で藤田観光はワシントンホテル株を7.18%保有し、ワシントン側も藤田観光株を0.30%保有しています。両社のホテルネットワークは合計76拠点・20,120室に広がるため、まずは「業界の中を知るAPAが、割安なホテル株を先回りで買った」と読むのが妥当ではないでしょうか。
公開資料で確認できるアパの投資先
公開資料で追えるAPAホールディングスの5%超保有は、現時点ではワシントンホテルと日本ホテル&レジデンシャル投資法人(3472)の2件のみです。後者は2024年10月に5.02%の大量保有が出て、同年12月には5.63%へ買い増している。少なくとも公開資料で確認できる範囲では、APAの上場投資先はホテル・宿泊関連にかなり寄っています。
今回のように特定銘柄ではなく、日本ホテル&レジデンシャル投資法人は、単なる外部投資先ではない点にも注目をしておきたいです。
資産運用会社のアパ投資顧問はアパホールディングスの100%子会社で、2023年12月以降はAPAグループのスポンサーサポートを受け、優先交渉権の付与やウェアハウジング機能の提供を受けている。2026年4月2日時点の分配金利回りは5.76%で、価格は70,700円だった。ここから見えるのは、APAが「自分たちで理解できるホテル・不動産キャッシュフロー」にお金を集めている、という姿です。
APAが見ていそうな共通点
かなりざっくり言うと、APAが見ていそうなのは3つにまとめてみると。
ひとつ目は「自分の土俵かどうか」。ホテル運営会社であれば、稼働率、客室単価、立地、改装余地、直販比率の改善余地を読みやすい。ふたつ目は「市場評価とのズレ」。利益が伸びているのにPERが低い、あるいは資産価値のわりにPBRが低い銘柄は注目しやすい。みっつ目は「手を入れたときの上振れ余地」で、スポンサー支援、ブランド再編、販路強化、コスト改善が効くかどうかだ。ワシントンホテルと日本ホテル&レジデンシャル投資法人は、この3条件にかなり沿っている。
とはいえ、今回のような1つの銘柄に投資というのは非常に珍しく、共通点というには弱いのは確かです。
次の「APA候補」を推測する
ここから先は事実ではなく、あくまで推測です。
その前提で言うと、私は「アパが次に見てもおかしくないホテル関連銘柄」を、アメイズ、グリーンズ、ポラリス・ホールディングス、ロイヤルホテルの順で見てみましょう。
基準は、①ホテル・宿泊が主戦場であること、②今の株価がそこまで高くないこと、③APAが事業の手触りを理解しやすいこと、の3つ
可能性がやや高め:アメイズ(6076)
アメイズは「HOTEL AZ」を全国93店舗で展開している。
九州発の標準化されたロードサイド型ホテルで、料金もわかりやすく、現場オペレーションの比較がしやすい。4月2日時点の参考指標は、時価総額約182億円、PER7.31倍、PBR0.98倍、予想配当利回り2.92%。PBR1倍割れ近辺というのは、「不動産やホテル網のわりに市場評価が重い」と見る投資家に刺さりやすい水準。
APAが最も値付けを比べやすいのは、実はこういう“わかりやすい宿泊株”かもしれません。
可能性は中位:グリーンズ(6547)
グリーンズは「コンフォートホテル」を中心に119店舗・16,796室を運営する中堅ホテル会社だ。4月2日時点の参考指標は、時価総額約284億円、PER7.81倍、PBR2.13倍、予想配当利回り1.95%。PERだけ見れば十分に安いが、PBRはワシントンホテルやアメイズほど低くないのです。
だから「資産の安さ」で拾うというより、「運営力の割に利益倍率が低い」と見るタイプの候補となります。APAが規模やブランド運営力を評価するなら面白いが、見た目の割安感ではアメイズに一歩譲ってしまう位置です。
可能性は中位:ポラリス・ホールディングス(3010)
ポラリスはブランド統合後のKOKO HOTELSが全国63ホテル・9,489室規模になっており、宿泊特化型の色が強い。4月2日時点の参考指標は、時価総額約423億円、PER10.58倍、PBR1.44倍、予想配当利回り2.21%。ホテルブランドの整理や規模拡大という文脈はAPAにも理解しやすいが、指標面の“割安インパクト”はワシントンホテルほどではない。したがって、候補には入るが本命ではない、という位置づけです。
可能性は低めだが、資産株としては面白い:ロイヤルホテル(9713)
ロイヤルホテルはリーガロイヤル系を運営する老舗で、4月1日時点のPERは23.68倍、PBRは0.58倍だった。
PBRだけ見るとかなり低いので「資産株」としては魅力がある一方、宿泊特化ではなく宴会・レストランも大きいフルサービス型だ。APAの強みは、狭小高効率、都心立地、宿泊収益の磨き込みにあるため、ロイヤルホテルは“安いけれどAPA色ではない”銘柄として見るのが自然だと思う。
ホテル業界で今なお「割安」と言いやすい銘柄はどこか
単純に数字だけで見るなら、利益に対して安く見えやすいのはアメイズ、グリーンズ、ポラリス・ホールディングス。資産に対して安く見えやすいのはロイヤルホテル。利回りまで含めた“ホテル関連キャッシュフロー”として見るなら、日本ホテル&レジデンシャル投資法人も面白い。逆に、藤田観光はワシントンホテルの提携相手として重要だが、4月2日時点でPER10.91倍、PBR3.41倍と、APAの「安いところを拾う」文脈ではワシントンホテルほど分かりやすくない。
まとめ
今回のポイントは、「純投資」という言葉をそのまま額面通りに受け取らないことが大事です。
APAはホテルの現場を知っているから、業績が伸び、配当が増え、それでもPERが5倍台に放置されていたワシントンホテルを見て、「これは割に合う」と判断した可能性が高いのです。
公開資料で見えるAPAの投資先も、ワシントンホテルと日本ホテル&レジデンシャル投資法人というホテル・不動産寄りの2件に集中しています。次にも投資が有りうるとして狙われやすいのも「ホテルのプロが見て安いと分かる銘柄」になる可能性を見るのがよさそうです。
現時点の仮説としては、アメイズが本命、グリーンズとポラリスが対抗、ロイヤルホテルは資産株枠、という整理になります。
それでも今の段階で優先順位を見るべきはやはりワシントンホテルをそのまま投資するのが順当です。それぐらい業績好調ながらも割安な銘柄です。
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