――南鳥島“レアアース泥”を起点に、儲かるのは採掘会社より“周辺の桶屋”
今回のテーマは「レアアース価格」ではなく「国策の発注先」
南鳥島周辺の日本EEZにある“レアアースを含む泥(レアアース泥)”について、日本は2026年に試験採取(試験的な採掘)を始める計画が報じられており、うまくいけば翌年に日量350トン規模の試験運用も視野に入っています。さらにこの取り組みは国家安全保障目的(安定供給)を強く意識した政府主導で、必ずしも「民間がレアアース販売で儲ける」こと自体が目的ではない、という文脈がはっきりしています。
この前提に立つと、株のテーマとして筋が良いのは、
- 「レアアースを売って儲ける会社」より
- “掘るために必要な装置・調査・環境モニタリング”を受託して儲ける会社
です。
いわゆる“風が吹けば桶屋が儲かる”を、妄想でなく必然の工程として組み立てるなら、ここがいちばん堅いのです。
なぜ「桶屋」が堅いのか:レアアース泥は“採掘より先にやること”が多い
南鳥島のレアアース泥は水深5,000〜6,000m級。ここで起きるのは、ざっくり言うと次の工程です。
- 探す(分布・量を精査)
- 環境を測る(影響を見張る)
- 泥をサラサラにする(=解泥)
- 吸い上げる(=揚泥。パイプで船上へ)
- 陸上で分ける(分離・精製)
このうち 1〜4 は、「採算が合うかどうか」の前に、そもそも試験を成立させるために必要です。
だから、国が前向きになればなるほど、まず仕事が増えるのは「測る会社」「装置を作る会社」「環境を見張る会社」です。
実際、JAMSTEC側も、環境負荷を小さくする方式を採りつつ「解泥・集泥・揚泥」を一体化したシステム開発・実証を進めてきたことを公表しています。
銘柄ピックアップ(確度重視・国策レバレッジ重視)
ここからが本題です。
「日本政府が国内採掘に前向きになるほど、業績への影響が出やすい」=国策の支出・委託が増えるほど、受注や開発案件が増えやすい、という視点で選びます。
A. “関与が明確に確認できる”中核どころ(確度:高)
1) 東洋エンジニアリング(6330)
桶屋ポイント:「泥を吸い上げる一連の仕組み」のうち、重要な装置(解泥・採泥まわり)の設計・製作側に入り得る
東洋エンジは自社ページで、JAMSTECの委託を受け、海底6,000mからレアアース泥を回収するシステム(サブシー系)に関わり、解泥・採泥に関する機器の基本設計・詳細設計・製作を担当してきたと明記しています。
なぜ国策レバレッジが効く?
国が「試験→量産試験→実用化」と進めるほど、必要装置は“研究用1台”から“現場で回す装置群”へ拡大しがちです。工程上の要所にいると、仕事が積み上がりやすい。
見るべきニュース(チェック項目)
- SIP3(後述)の進捗・実証範囲の拡大
- 採泥・揚泥の“日量○トン”がどこまで具体化するか
2) 東亜建設工業(1885)
桶屋ポイント:「泥をサラサラにする(解泥)」=吸い上げ可能にする前処理の現場技術
SIPのニュースレターでは、レアアース泥の解泥試験(大型試験機)を実施した内容が掲載され、誌面上に TOYO / TOA の表記も確認できます。
なぜ国策レバレッジが効く?
深海で“泥を吸い上げる”って、配管以前に「泥が流れる状態にならないと始まらない」。ここが詰まると全部止まるので、技術が採用されれば存在感が出ます。
見るべきニュース
- 解泥方式の採用(標準化)・実海域での反復試験の有無
- 国のプロジェクトの継続予算(試験が続くほど委託が続く)
B. “採掘が進むほど必要性が増す”ロボ・探査系(確度:中〜高)
3) トピー工業(7231)
桶屋ポイント:深海で動ける「足回り(クローラーロボ)」=調査・軽作業の無人化
トピーは、東亜建設工業と共同で水深3,000m対応の水中作業クローラーロボットを開発し、海底鉱物資源の調査や開発に活用できる旨を自社ニュースで説明しています。
“桶屋理論”としての確実性
深海は人間が潜って作業しづらい。だから、開発が進むほど
- 調査(地形・地質)
- 設置・点検
- ちょっとした作業
が「無人化」に寄っていきます。採掘そのものより前に、まずここが増えやすい。
4) IHI(7013)
桶屋ポイント:探査・無人化・環境配慮技術(=“掘る前”のインフラ)
IHIは、海底資源探査で使われる従来音源(エアガン)の衝撃音問題を踏まえ、“やさしい音”で探査する技術(Marine Seismic Vibrator)について技報で説明しています。
また、海洋無人システム関連の資料も公開されています。
加えて後述の nHORT に株主として参加していることも、間接的に「国策ルート」に乗りやすい材料です。
確実性の置き方
IHIは事業が広いので、このテーマ単体で業績が動くかは案件規模次第。ただし「国が深海資源を進めるなら必ず要る技術」側に寄っています。
C. “許認可の首根っこ”を押さえる環境モニタリング(確度:高、桶屋度:最大)
レアアース泥の開発は「掘れれば勝ち」ではなく、環境影響の説明責任がセットです。
つまり、国が前向きになればなるほど、環境ベースライン調査・継続モニタリングは逃げられません。
ここが「妄想でなく確実」な理由はシンプルで、SIP3でも海洋環境影響評価システムの開発がテーマとして明示されているからです。
5) いであ(9768)
桶屋ポイント:“環境を測って説明する”が本業。国策で仕事が発生しやすい
いであは、SIP関連の環境モニタリング(深海の長期観測装置など)への関与が自社資料で確認できます。
さらに、後述のnHORTの出資企業にも入っています。
なぜ業績に効きやすい?
環境調査は「毎年・継続」が起きやすい(単発で終わりにくい)。
しかも採掘量が増えるほど、説明責任も増えるので、仕事が“積み上がる”タイプです。
6) 石油資源開発(JAPEX、1662)
桶屋ポイント:海洋でのオペレーション経験+nHORT出資で国策側の仕事に接続
nHORTの出資企業として明記されています。
確実性の置き方
直接「レアアースで儲かる」というより、国策プロジェクトで必要になる
- 海洋での運用ノウハウ
- 調査・技術開発の実務
に近いところにいる、という見方です。
7) 岡本硝子(7746)
桶屋ポイント:nHORT出資(=国策系の深海調査・モニタリングに近い位置)
nHORTの出資企業として名前が出ています。
注意点(ここは一段慎重に)
「何の製品でどれだけ収益化するか」は、外からは読みづらい。
ただし“出資している”という事実は、「その領域で商流を作りたい意思」のシグナルにはなります。
ここまでのまとめ:今回の“勝ち筋”は「採掘の成否」より「国策の工程表」
日本はレアアース泥について、これまでに深海での揚泥(吸い上げ)実証を積み上げてきた流れがあり、SIPの資料でも「深海に堆積するレアアース泥の採鉱を可能にする技術」などが成果として整理されています。
そして、次のステップとして2026年の試験採取が報じられている。
この状況なら、投資テーマとしての“確実性”を作るコツは、
- 「価格が上がる」ではなく
- 「工程が進むと発生する支出(調査・装置・環境)に張る」
です。
追加の“現実チェックリスト”(記事を読んだ人が迷わないために)
銘柄を追うなら、ニュースは次の順番で見るとブレにくいです。
- 国のマイルストーン
- 2026年の試験採取が予定通り進むか
- 2027年の日量350トン試験運用に具体性が増えるか
- SIP3の進捗
- Theme01(レアアース生産技術)で「ちきゅう」を使い、採鉱〜製錬までの実証や一貫供給システムを進める方針が明記
- 環境影響評価の仕組みづくりが同時並行で進む
- 企業側の“受注・委託”の一次情報
- 東洋エンジのように「委託を受けて何を担当したか」を明記しているところは強い
- 東亜建設のように実験・実証の実績が積み上がると、採用の可能性が上がる
リスクも正面から(ここを外すと“妄想テーマ”になる)
- 技術リスク:深海は想定外が起きやすく、遅延も普通にある
- 環境・世論リスク:環境影響評価が重くなれば、工程が遅れる(=でも“環境桶屋”は仕事が増える可能性もある)
- 国際ルール・外交リスク:深海資源開発は国際的な議論の影響を受けやすい
- 企業規模の問題:IHIのように巨大企業だと、テーマが当たっても業績への寄与が相対的に薄くなる場合がある(逆に中小は振れやすい)
この記事の“銘柄まとめ”(確度順・短縮版)
- 東洋エンジニアリング(6330):JAMSTEC委託で解泥・採泥機器の設計・製作に関与を明記
- 東亜建設工業(1885):SIPでレアアース泥の解泥試験(大型試験機)の実績が確認できる
- いであ(9768):深海環境モニタリングに関与+nHORT出資
- IHI(7013):探査・無人化・環境配慮技術+nHORT株主
- トピー工業(7231):水深3,000m対応の水中作業ロボ(海底資源調査・開発用途)
- 石油資源開発(1662):nHORT出資(海洋調査・環境評価の商流側)
- 岡本硝子(7746):nHORT出資(ただし収益ルートは要IR確認)


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