国内初の円建てステーブルコイン「JPYC」で沸く関連株:理想と現実、成長余地は?

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背景:ステーブルコイン関連株の急騰

日本初の円連動ステーブルコイン「JPYC」が金融庁から資金移動業者としての登録を受け、国内初の円建てステーブルコイン発行が現実味を帯びたことが材料視され、関連株が軒並み急騰しています。JPYCに出資するアステリア(3853)は連日ストップ高となり、同社の他にもパーソルホールディングス(2181)、アイフル(8515)、電算システムホールディングス傘下の電算システム(4072)、ユナイテッド(2497)などJPYC出資企業にも投資資金が向かいました。JPYC出資先としては他にTWOSTONE&Sons(7352)も名を連ねています。また、この「ステーブルコイン」テーマ自体への注目から、JPYCへの直接出資ではないもののブロックチェーン決済や発行基盤に関わる企業にも物色が広がり、シンプレクス・ホールディングス(4373)やSpeee(4499)、SBIホールディングス(8473)などにも買いが集まりました。

円建てステーブルコイン「JPYC」とは何か

「ステーブルコイン」とは法定通貨やコモディティなど現実資産の価値に価格が連動するよう設計されたデジタル通貨の一種です。JPYCはその名の通り日本円と1:1で連動する円建てステーブルコインであり、裏付け資産として預貯金や日本国債を保有し、ユーザーは1 JPYCを1円として円に償還(換金)できます。日本では2023年6月施行の改正資金決済法によって、この種のステーブルコインは「電子決済手段」として暗号資産(仮想通貨)とは明確に区分され、銀行・信託会社または登録を受けた資金移動業者のみが発行可能となりました。JPYCはこの新ルールのもとで最初に認可を得た事例であり、2025年8月18日付で資金移動業者の登録(関東財務局長 第00099号)を完了したと発表しています。同社は数週間以内(今秋)にも新たな発行・償還サービス「JPYC EX」を開始する計画で、国内外で円建てステーブルコインの普及と利便性向上を目指すとしています。

ステーブルコインがもたらす理想

ステーブルコインへの期待が高まる背景には、その利便性への理想があります。金融当局はJPYCのような円建てステーブルコインを国際送金の手段などに活用し、送金コスト削減や決済効率化を図りたい考えです。

実際、JPYC発行元の提携先企業との間では、ステーブルコイン活用の具体的ユースケース構想も動き始めています。例えばパーソルHDはグループのCVC(コーポレートベンチャーファンド)を通じてJPYCに出資し、給与支払いの自動化への応用を模索。電算システムはコンビニ決済・POSシステムとの送金基盤連携を検討し、アイフル傘下のライフカードはJPYCを使ったプリペイドカード展開を視野に入れています。また、日本企業にとって円建てステーブルコインを用いれば国際取引で二重の為替交換(円⇔ドル⇔ドル建てステーブルコイン)を避けられ、為替変動リスクを意識せず即時決済できるメリットも大きいと指摘されています。このようにステーブルコインが実現し得る理想は、安価で迅速な送金・決済インフラの構築や、ブロックチェーン上で24時間途切れない資金移動、さらにはWeb3領域での新サービス創出など、多方面にわたります。

普及への現実的な課題

一方で、こうした理想の裏には現実的な課題も存在します。まず、日本の資金移動業型ステーブルコインには1日あたり100万円までという発行・償還額の上限が定められており、大口の送金や決済には現行制度上の制約があります。また、JPYCを含むステーブルコインを実際に利用できる場所(加盟店や取引所など)は現時点で限られており、その決済インフラや会計・税務処理の整備はこれからです。法制度の面では1 JPYC = 1円の交換価値が保証されているとはいえ、一般のユーザーや企業に広く受け入れられ日常生活で使われるようになるまでには時間がかかる可能性があります。JPYC社自身も今後、送金・決済やWeb3サービスとの連携、新たな発行チェーン追加などユースケースの拡充に取り組み、パートナー企業との協業を強化していくと表明しています。こうした課題を一つ一つ乗り越え、ステーブルコインを安定的に普及させていく地道な努力が求められる段階と言えるでしょう。

今後の成長ポテンシャル

規制整備されたとはいえ、円建てステーブルコイン市場はまだ黎明期であり、その成長余地は未知数です。しかしJPYC社は今後3年間で約70億ドル(約1兆円弱)規模のJPYC発行を目指す野心的な計画も伝えられており、実現すれば関連ビジネスの市場規模拡大につながります。さらに今後はJPYC以外にも、例えば三菱UFJ信託銀行が開発したステーブルコイン発行基盤「Progmat Coin」の活用などを通じて企業や銀行が独自の円建てデジタル通貨発行に参入してくる可能性も指摘されています。実際、米ドル連動型の主要ステーブルコインであるUSDT(テザー)やUSDC(USDコイン)はそれぞれ暗号資産の時価総額ランキングで4位・7位につけるまでに成長し(2025年8月時点で約24兆円・10兆円規模)、24時間取引高も数十兆円規模に達しています。こうしたグローバルな事例を見ると、円建てステーブルコインにも長期的には大きな潜在市場があると考えられます。日本においても法的な枠組みが整ったことで、今後は安心安全な形で新たなフィンテックサービスが生まれ、関連企業の収益機会が広がる余地は十分にあるでしょう。

ステーブルコイン関連の注目銘柄(日本株)

最後に、日本株市場でステーブルコイン関連として注目される主な銘柄を整理します。JPYCに直接関与する企業を中心に、関連度の高い企業を以下に挙げます。

  • アステリア (3853) – JPYCに出資するソフトウェア企業。傘下ファンドを通じてJPYCに資本参加しており、JPYCの承認報道を受けて株価は連日ストップ高となりました。
  • パーソルホールディングス (2181) – 人材サービス大手。企業ベンチャーファンド(CVP)経由でJPYCに出資しており、将来的にはステーブルコインによる給与支払いの自動化を目指す構想もあります。
  • アイフル (8515) – 消費者金融大手。クレジットカード子会社のライフカードとともにJPYCに出資し、JPYCを活用したプリペイドカードサービスの展開を模索しています。
  • 電算システム (4072) – 決済代行など金融ITサービス企業(電算システムHD傘下)。JPYCに出資するとともに、ブロックチェーンを活用したコンビニ送金・決済基盤の構築支援も発表しました。
  • ユナイテッド (2497) – 投資事業も手掛けるネットサービス企業。JPYCを資金提供面で支援する出資企業の一つです。
  • TWOSTONE&Sons (7352) – フリーランス向け事業などを展開。2021年にJPYCへ出資しており、今回のテーマでも関連株の一つとして注目されています。
  • SBIホールディングス (8473) – 金融サービス大手で暗号資産事業も展開。ステーブルコインの取り扱いが可能な電子決済手段等取引業者として登録済みで、今後の円建てステーブルコイン市場をリードする存在と目されています。
  • シンプレクス・ホールディングス (4373) – 金融ITソリューション企業。グループ会社が企業向けのステーブルコイン事業企画・開発支援を開始しており、関連分野に参入しています。
  • Speee (4499) – デジタルマーケティング企業。三菱UFJ信託銀行のステーブルコイン発行基盤「Progmat Coin」を活用した事業を推進しており、円建てステーブルコイン実用化に絡む動きがあります。
  • インタートレード (3747) – 金融システム開発会社。子会社を通じブロックチェーン決済コンサルティングを手掛け、電算システムと連携してステーブルコイン決済プラットフォーム構築を支援しました。

まとめ

円建てステーブルコインJPYCの登場は、日本の金融・ブロックチェーン業界における画期的な一歩と言えます。関連銘柄には短期的な物色人気が集まりましたが、その将来的な成長はステーブルコインの実需拡大にかかっています。規制環境の整備により理想への土台は築かれましたが、今後は現実の課題を克服しつつ、安定した普及と収益化につなげられるかが問われるでしょう。投資家としても過度に楽観視することなく、リスクと機会を中立的に見極めながらこの新分野の行方を注視していく姿勢が重要です。 

参考文献・出典:

  • 【5】CoinDesk Japan「金融庁、JPYCを資金移動業者として登録──国内初の円建てステーブルコインへ」(2025年8月18日)coindeskjapan.comcoindeskjapan.com
  • 【8】株探ニュース「ステーブルコイン関連株が急騰、JPYCの資金移動業者登録を材料視」(2025年8月21日)kabutan.jpkabutan.jp
  • 【17】CoinPost「JPYC、日本円ステーブルコイン発行へ 新サービス『JPYC EX』とは?」(2025年8月20日)coinpost.jp
  • 【18】CoinPost(上記同記事)「JPYCとパートナー企業によるユースケース構想」(2025年8月20日)coinpost.jp
  • 【20】JPYC岡部代表のnote「JPYCが『新しいステージ』へ──資金移動業ライセンス取得のご報告」(2025年8月21日)note.com
  • 【21】Benzinga(Webull経由)「Circle社支援のJPYC、公式承認間近との報道」(2025年8月17日)webull.comwebull.com
  • 【23】Zennブログ「JPYC 国内初の円連動の電子決済手段を読み解く」(2025年8月18日)zenn.devzenn.dev
  • 【25】PR TIMES「国内初の円建ステーブルコイン発行へ-資金移動業者の登録を取得」(JPYC株式会社プレスリリース, 2025年8月18日)prtimes.jpprtimes.jp
  • 【27】株探ニュース「アステリアは連日ストップ高、JPYC出資企業として人気化」(2025年8月19日)kabutan.jpkabutan.jp

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