cisさんが見ていたのは「日本株の材料」ではなく、世界の値札だった
最近、キオクシアHDの株価が大きく上昇し、個人投資家の間でも大きな話題になりました。特に注目されたのが、著名個人投資家のcisさんが、米国のサンディスクとの比較を通じて、キオクシアの評価余地に早くから言及していたことです。検索結果で確認できる範囲でも、cisさんは「サンディスク」と「キオクシア」の利益率・省電力性・評価差に触れる趣旨の投稿をしていたようです。
キオクシアの株価上昇は、単に「日本株に材料が出た」という話ではありません。むしろ本質は、米国市場で先に付いた“値札”が、日本株に遅れて反映されたという現象に近いと思います。
実際、2026年5月21日にはキオクシアの時価総額が30兆円を超え、売買代金も3兆円を超える規模になったと報じられました。日本株の中でもトヨタ、三菱UFJ、ソフトバンクグループに次ぐ規模として扱われるほどの急拡大です。
この動きは、コロナ禍で米国のネット通販・SaaS・巣ごもり関連株が先に買われ、その後に日本のBASEやMakuakeのような銘柄へ資金が波及した流れとも似ています。
つまり、今回考えたいテーマはこうです。
なぜ米国で先にテーマ株が買われ、日本株は後から一気に評価されるのか。
そして、その“時差”は個人投資家にとってチャンスになるのか。
結論から言うと、この時差は確かにチャンスになります。
ただし、「米国株が上がったから日本の似た会社も上がる」という単純な話ではありません。重要なのは、米国のテーマ株と日本企業の間に、本当に業績・技術・顧客・市場構造のつながりがあるかを見極めることです。
キオクシアで何が起きたのか
キオクシアはNANDフラッシュメモリやSSDを手掛ける企業です。以前は東芝メモリとして知られていました。現在の株価上昇の背景には、AIデータセンター向けのストレージ需要があります。
AIというと、多くの人はまずNVIDIAのGPUを思い浮かべます。しかし、AIデータセンターに必要なのはGPUだけではありません。大量のデータを保存し、高速に読み書きするためのストレージも必要になります。ここでNANDフラッシュやSSDの需要が強くなります。
キオクシアの2026年3月期決算では、売上収益が2兆3376億円、親会社所有者帰属当期利益が5545億円となりました。会社側は、生成AIを中心としたデータセンター向け需要が強く、平均販売価格の上昇や出荷数量の増加が売上増加の主因だったと説明しています。さらに2027年3月期第1四半期の見通しでは、売上収益1兆7500億円、親会社所有者帰属四半期利益8690億円という非常に大きな数字を出しています。
また、報道ではキオクシアの森田社長がAI需要の大きな波に触れ、今後も市場の強さが続くという見方を示したことも伝えられています。さらに、キオクシアは多様な投資家を呼び込み企業価値を高めるため、米国上場を目指す方針も明らかにしました。
ここで重要なのが、米国のサンディスクとの関係です。キオクシアとサンディスクは、長年にわたってNANDフラッシュメモリの開発・製造で協業してきました。四日市工場などの共同事業を通じて、同じ技術・同じ市場に深く関わっています。つまり、サンディスクの株価やバリュエーションは、キオクシアを見るうえでかなり重要な比較対象になります。
米国では、メモリ関連株がAI需要を背景に大きく買われています。たとえばMicronは、AI向けメモリ需要の強さを背景に時価総額が1兆ドル規模に到達したと報じられました。サンディスクも高いバリュエーションで評価され、日本市場の投資家がキオクシアとの比較に注目するきっかけになりました。
つまりcisさんの発想は、単なる「キオクシアが良さそう」という話ではなく、次のような比較だったと考えられます。
米国では、同じAIストレージ需要を受ける企業が高く評価されている。
一方、日本のキオクシアは同じテーマに乗っているにもかかわらず、当初はそこまで評価されていない。
ならば、その差が埋まる可能性があるのではないか。
これは非常に合理的な見方です。株式市場では、同じテーマに乗る企業が世界中で同時に評価されるとは限りません。先に米国で評価が進み、その後に日本株へ波及することはよくあります。
なぜ米国市場が先に動き、日本株は後から動くのか
この現象を「日本の投資家が遅れている」とだけ考えると、少し雑です。実際には、いくつかの構造的な理由があります。
1. 米国市場は世界のテーマ株に最初に値札を付ける場所だから
米国市場は、株式市場の規模、流動性、投資家層の厚さが非常に大きい市場です。SIFMAの資料では、米国株式市場は世界の時価総額のほぼ半分を占める規模であり、米国資本市場の深さと流動性は世界的に見ても非常に大きいとされています。
また、米国では家計の株式保有比率も高く、機関投資家、ヘッジファンド、年金、ETF、個人投資家、オプション市場などがテーマに素早く反応します。SIFMAによると、米国家計の58.0%が株式を保有しており、家計の流動性金融資産の中でも株式や投資信託の比率が大きいことが示されています。
そのため、AI、半導体、データセンター、宇宙、防衛、サイバーセキュリティのようなテーマが出ると、まず米国市場で「このテーマの中心企業はいくらで評価されるべきか」という値札が付きます。
NVIDIA、Broadcom、Micron、Palantir、Vertiv、GE Vernova、サンディスクなどが米国で先に買われると、その後に日本市場で「同じテーマに関係する日本企業はどこか」という探索が始まります。
2. 米国にはテーマの“主役”が上場していることが多い
AIならNVIDIA、Broadcom、Micron。
データセンター設備ならVertiv、Eaton、GE Vernova。
サイバーセキュリティならCrowdStrikeやPalo Alto Networks。
AIソフトウェアならPalantirやServiceNow。
このように、世界の成長テーマの中心銘柄は米国市場に上場していることが多いです。すると、テーマそのものの評価は米国で先に形成されます。
日本企業はそのテーマの「周辺」「部材」「製造装置」「インフラ」「同業比較」として後から見直されることが多くなります。
今回のキオクシアも、AIデータセンター向けストレージ需要という大きなテーマの中で、米国のMicronやサンディスクが先に評価され、その比較対象としてキオクシアが見直されたと考えると分かりやすいです。
3. 日本株は英語開示・アナリストカバー・IRの面で発見が遅れやすい
日本株には、海外投資家から見たときの情報の壁があります。日本語中心の開示、英語資料の遅れ、小型・中型株のアナリストカバー不足などです。
JPXの海外投資家向け調査では、英語開示は改善しているものの、投資家は引き続きIR説明会資料、英語の説明会書き起こし、小型・中型株の英語開示、要約ではなく全文翻訳などを求めていることが示されています。
さらに、日本の小型株・中型株はアナリストカバーが薄い傾向があります。SPARXは、TOPIX Small Indexの構成銘柄の70%超がアナリストカバーなしであり、そのため隠れた投資機会が存在し得ると説明しています。
これは個人投資家にとって重要です。
大手米国株では情報が瞬時に織り込まれやすい一方、日本の中小型株では、良い材料があってもすぐに世界中の投資家が気づくとは限りません。
つまり、日本株には「発見の遅れ」が残りやすいのです。
4. 日本の個人・機関投資家は、米国に比べて株式リスクを取りにくい
日本では、家計資産に占める現預金の比率が高く、株式比率は米国より低い傾向があります。Reutersは、BOJデータをもとに、日本の家計は7.7兆ドル相当を現金・預金で保有し、株式比率は13%程度にとどまる一方、米国では約40%、欧州では21%だと報じています。
これは「投資家の質が低い」という話ではありません。
単に、市場参加者の構成、リスク許容度、運用文化、資金の流れが違うということです。
米国では、テーマが出るとすぐにリスクマネーが動きます。日本では、業績確認、会社計画、決算発表、証券会社レポート、海外投資家の買いなどを経て、徐々に認識されることが多いです。
そのため、米国では「期待」で先に買われ、日本では「数字が出てから」買われる傾向があります。

この“時差”は個人投資家にとってチャンスになるのか
答えは、なります。
ただし、チャンスになるのは、次の3つがそろった場合です。
条件1:米国で先に評価されたテーマが、本当に日本企業の業績につながること
たとえば「AIが伸びる」だけでは不十分です。
その日本企業がAI需要によって、売上・利益・受注・単価・稼働率のどれかを伸ばせる必要があります。
キオクシアの場合は、AIデータセンター向けのストレージ需要が会社の決算や見通しに直接表れていました。これは非常に大きいです。
条件2:米国企業との比較が妥当であること
同じテーマでも、ビジネスモデルが違えば比較できません。
たとえば、米国のAIソフトウェア企業がPER100倍で買われているからといって、日本のSIerが同じPERになるとは限りません。
一方、キオクシアとサンディスクのように、NANDフラッシュという同じ市場で、しかも共同開発・共同生産に近い関係がある場合は、比較の妥当性が高くなります。
条件3:まだ株価に織り込まれていないこと
これが最も重要です。
「良い会社」でも、すでに株価が大きく上がっていれば、チャンスではなくリスクになります。キオクシアのように急騰した後は、米国株との比較で上がる余地が残っているかだけでなく、すでに期待が過剰になっていないかも見る必要があります。
米国株が先に上がったテーマは、日本株にプラスに波及することもありますが、逆に米国株が下がれば日本株にマイナスが波及することもあります。実際、米国のメモリ関連株下落を受けてキオクシアが売り気配になった例も報じられています。
次に探すべき「米国先行・日本後追い」テーマ
ここからは、キオクシア型の発想で見たときに、今後も調査価値があるテーマを整理します。
繰り返しますが、これは買い推奨ではありません。
「米国で先に大きな評価が付き、日本でまだ十分に評価されていない可能性を調べるための候補」です。
1. AIストレージ・NAND・SSD関連
米国側の先行サイン
米国ではMicron、サンディスク、Western Digitalなどのメモリ・ストレージ関連がAIデータセンター需要を背景に大きく評価されました。TrendForceも、AIサーバーインフラ向けにエンタープライズSSD需要が強く、HDD不足からQLC SSDへ需要が流れていると指摘しています。
IDCも、主要メモリメーカーがAIデータセンター向けのHBMや高容量DDR5に生産を振り向けたことで、一般DRAMやNANDの供給が制約され、価格や供給面に影響が出ていると説明しています。
日本側の調査候補
最も直接的なのはキオクシアです。
ただし、キオクシアはすでに大きく再評価されました。今から見る場合は、「次の上昇余地」よりも、「期待がどこまで織り込まれたか」を慎重に見る必要があります。
周辺では、半導体材料、装置、検査、パッケージ、データセンター向けSSD需要に関わる部材企業も調査対象になります。ただし、キオクシアほど直接的な比較対象がある銘柄は限られます。
見るべき指標
見るべきなのは、NAND価格、エンタープライズSSD需要、キオクシアの平均販売価格、出荷ビット数、設備投資、サンディスクやMicronの株価・決算です。
キオクシア型の相場は、米国メモリ株との連動が非常に強くなりやすいため、米国市場の動きも必ず確認する必要があります。
2. カスタムAI半導体・AI ASIC・SoC
米国側の先行サイン
AI半導体ではNVIDIAが圧倒的な中心ですが、最近はクラウド大手が自社向けのカスタムAIチップを求める動きも強くなっています。
Reutersは、BroadcomのAIチップ収益が大きく伸びており、Google、Microsoft、Amazon、Metaなどの需要が背景にあると報じています。BroadcomはAIインフラ投資の拡大を受け、カスタムチップ関連で大きな期待を集めています。
Marvellについても、カスタムAIチップ需要を背景にデータセンター収益が成長していると報じられています。
日本側の調査候補
日本株でこのテーマを見るなら、まず調査候補に入るのはソシオネクストです。
ソシオネクストは、データセンターやネットワーク向けのカスタムSoCを手掛けています。同社は、AIによるデータトラフィック増加や低遅延ニーズに対応するため、最適化されたカスタムSoCを提供していると説明しています。
同社のビジネスは、顧客の製品開発の早い段階から関与し、設計から量産まで関わる「Solution SoC」モデルです。これは、米国で評価されているBroadcomやMarvellのカスタムチップ需要と比較して考える価値があります。
注意点
ただし、ソシオネクストは「AIチップ銘柄」と単純に見ると危険です。
カスタムSoCは開発から量産まで時間がかかり、売上が出るまでにラグがあります。また、特定顧客への依存、開発費、採算性、量産タイミングも重要です。
このテーマでは、米国のBroadcomやMarvellが上がったから即座に日本株も買う、ではなく、日本企業の受注・量産・顧客構成が本当にAIデータセンター需要に結びついているかを見る必要があります。
3. 光通信・データセンター配線・光部品
米国側の先行サイン
AIデータセンターでは、GPUだけでなく、サーバー間をつなぐ高速通信も重要です。大量のデータを高速にやり取りするため、光通信、光トランシーバー、光ファイバー、データセンター内配線の需要が強くなります。
米国ではLumentumなどの光関連株がAIデータセンター需要を背景に大きく上昇したと報じられています。また、MetaがCorningと60億ドル規模の光ファイバーケーブル契約を結んだことも、データセンター向け光通信需要の強さを示しています。
日本側の調査候補
日本では、フジクラ、古河電工、住友電工などが調査候補になります。
Reutersは、フジクラについて、AIデータセンターのブームを背景に光ファイバー需要が強く、株価が大きく上昇したと報じています。フジクラは海外顧客向けの比率も高く、Alphabetを含む大口顧客への供給にも触れられています。
フジクラの業績も強く、2026年3月期は売上高1兆1824億円、営業利益1887億円、親会社株主帰属当期純利益1572億円と大幅増益になったと発表されています。
住友電工も、データセンター内外の機器をつなぐ光通信デバイスを展開しています。古河電工も、データセンター向けソリューションやハイパースケールデータセンター向けコネクタ事業に関わっています。
注意点
このテーマはかなり分かりやすいため、すでに相場になっている銘柄も多いです。
そのため、「まだ安いか」よりも、今後の業績が現在の株価期待を上回れるかを見る必要があります。
特にフジクラのように大きく上がった銘柄は、良い会社であることと、今から買って良い株価であることを分けて考える必要があります。
4. データセンター冷却・電力・インフラ
米国側の先行サイン
AIデータセンターは大量の電力と冷却を必要とします。米国ではVertiv、Eaton、GE Vernova、Schneider Electricなど、データセンター電源・冷却・電力インフラ関連が注目されています。
Reutersは、AIデータセンターによる電力需要がガスタービンや送配電機器の需要を押し上げており、GE Vernovaが見通しを引き上げたと報じています。
また、AIデータセンターの大型施設では1ギガワットを超える継続電力を消費する可能性があり、これは最大85万世帯分に相当する規模だとも報じられています。
日本側の調査候補
日本では、ダイキン工業、三菱重工、日立製作所、電力設備関連企業などが調査対象になります。
ダイキンは、AIデータセンター冷却システム会社であるDynamic Data Centers Solutionsの買収に合意し、AIデータセンター向けソリューション事業への本格参入を進めています。
三菱重工グループも、データセンター冷却を重要テーマとして扱っており、高性能CPUやGPUの普及で冷却・電力消費が大きな課題になっていると説明しています。同社は国内トップのターボ冷凍機など、冷却システムに強みを持つとしています。
注意点
このテーマは非常に有望に見えますが、株価への反映には時間がかかることがあります。
データセンター案件は大型で、受注から売上計上まで時間がかかるためです。
また、電力インフラは規制、地域性、政策、設備投資サイクルの影響も大きくなります。米国のVertivやGE Vernovaのような値動きが、そのまま日本株に反映されるとは限りません。
5. 先端パッケージ・HBM周辺・半導体後工程
米国側の先行サイン
AI半導体では、チップそのものだけでなく、複数のチップを高性能に組み合わせる先端パッケージ技術も重要になっています。HBMや高性能AIチップでは、後工程・パッケージ基板・封止装置・材料の重要性が高まっています。
Reutersは、AmkorがAMDとAIチップの先端パッケージで協業していることを報じており、AIデータセンター向けプロセッサでは複数のチップ部品を組み合わせる技術が重要であると説明しています。
日本側の調査候補
日本では、イビデン、TOWA、レゾナック、JX金属、半導体材料・後工程装置関連企業などが調査候補になります。
イビデンは、AI・高性能サーバー向けの高機能ICパッケージ基板への投資計画を発表しています。2026年度から2028年度にかけて、約5000億円規模の投資を行う計画です。
TOWAは、生成AI向け半導体で使われるHBM関連のモールディング装置を展開しており、HBM向け装置が量産で使われていると説明しています。
レゾナックも、生成AIや先端パッケージを背景に、後工程材料の需要拡大に関わる企業として注目されます。
注意点
このテーマは、個人投資家にとってやや難易度が高いです。
なぜなら、企業ごとに関わる工程が違い、AI需要がどの程度その会社の売上・利益に反映されるかを読み解く必要があるからです。
ただし、米国市場でAIチップ関連が高く評価される中で、日本の後工程・材料・装置企業が再評価される可能性は十分にあります。
6. AIソフトウェア・サイバーセキュリティ・防衛DX
米国側の先行サイン
米国ではPalantir、CrowdStrike、ServiceNow、Palo Alto Networksなど、AIソフトウェアやサイバーセキュリティ関連が高い評価を受けています。
このテーマも、日本株へ波及する可能性はあります。
ただし、半導体やデータセンター関連に比べると、日本企業との比較はかなり難しいです。
日本側の調査候補
日本では、NEC、富士通、トレンドマイクロ、PKSHA Technology、SCSK、BIPROGYなどが調査候補になります。
ただし、ここでは注意が必要です。
米国のAIソフトウェア企業は、SaaS型の高成長・高利益率・グローバル展開を前提に高いPERやPSRが付くことがあります。一方、日本のIT企業はSI、受託開発、国内企業向けシステム構築の比率が高い場合があります。
そのため、単純に「米国のAIソフト株が上がったから日本のIT株も同じように上がる」と考えるのは危険です。
この分野で見るべきなのは、AIによる売上成長率、継続課金比率、海外展開、利益率、政府・防衛・金融向けの大型案件です。
キオクシア型のチャンスを探すための実践チェックリスト
米国で先に買われ、日本株へ遅れて波及する銘柄を探す場合、次の順番で見ると分かりやすいです。
1. 米国で急騰しているテーマを確認する
まず、米国でどのテーマが買われているかを見ます。
AI半導体、メモリ、光通信、電力、冷却、サイバーセキュリティ、宇宙、防衛などです。
ここで大事なのは、単に株価が上がっているかではなく、なぜ上がっているかです。
決算で売上が伸びたのか。
受注が増えたのか。
価格が上がったのか。
供給不足なのか。
設備投資サイクルなのか。
理由まで確認します。
2. 日本に「同じ需要」を受ける企業があるか探す
次に、日本企業で同じ需要を受ける会社を探します。
ポイントは、同業というより、同じ顧客・同じ設備投資・同じ技術トレンドに関わっているかです。
キオクシアの場合は、サンディスクとの共同事業があり、同じNANDフラッシュ市場に属していました。これは非常に強い比較根拠です。
一方で、単に「AIっぽい」「データセンターっぽい」というだけでは弱いです。
3. 業績にすでに出ているか、これから出るのかを確認する
株価が大きく動くには、最終的に業績が必要です。
見るべきなのは、売上、営業利益、受注残、会社計画、設備投資、セグメント別売上、利益率です。
キオクシアの場合は、会社の決算と見通しにAIデータセンター需要がはっきり表れていました。だからこそ、米国株との比較が説得力を持ちました。
4. バリュエーション差が本当に残っているかを見る
ここが最も難しいです。
「米国企業のPERが50倍、日本企業のPERが10倍だから安い」と単純に考えるのは危険です。
米国企業の方が成長率、利益率、資本効率、株主還元、英語開示、投資家層で優れている場合、その差には理由があります。
ただし、同じ市場・同じ技術・同じ需要を受けていて、かつ日本企業の利益成長が明確になっているにもかかわらず、評価が大きく低い場合は、見直し余地があります。
キオクシアの相場では、サンディスクとのPER差や時価総額差が市場で意識されました。市場コメントでも、サンディスクのPERが50倍前後である一方、キオクシアの評価が相対的に低いという見方が紹介されています。ただし、このような数字は株価や会社予想で大きく変わるため、必ず最新の決算と株価で確認する必要があります。
5. きっかけ、つまりカタリストを探す
日本株が米国株に遅れて見直されるには、きっかけが必要です。
代表的なカタリストは次のようなものです。
| カタリスト | 内容 |
|---|---|
| 決算発表 | 売上・利益・受注が予想以上に強い |
| 会社計画の上方修正 | テーマが業績に直結していると確認される |
| 米国同業の急騰 | 比較対象として日本株が見直される |
| 英語開示・海外IR | 海外投資家が買いやすくなる |
| 指数採用 | パッシブ資金が入る可能性 |
| 米国上場・ADR | 海外投資家のアクセスが改善する |
| 大型受注・設備投資 | 将来利益が見えやすくなる |
キオクシアの場合は、好決算、AIデータセンター需要、米国メモリ株との比較、そして米国上場方針などが重なりました。
現時点での研究候補まとめ
以下は、キオクシア型の発想で調べる価値があるテーマです。
| テーマ | 米国側の先行銘柄・サイン | 日本側の研究候補 | 見るべきポイント |
|---|---|---|---|
| AIストレージ・NAND | Micron、サンディスク、Western Digital | キオクシア、関連材料・装置企業 | NAND価格、SSD需要、AIデータセンター向け売上 |
| カスタムAI半導体 | Broadcom、Marvell | ソシオネクスト、ルネサスなど | AI SoC案件、北米顧客、量産時期、利益率 |
| 光通信・データセンター配線 | Lumentum、Corning、Ciena | フジクラ、古河電工、住友電工 | 800G/1.6T、光ファイバー需要、海外データセンター向け売上 |
| 冷却・電力インフラ | Vertiv、Eaton、GE Vernova | ダイキン、三菱重工、日立など | 液冷、ターボ冷凍機、受注残、電力インフラ投資 |
| 先端パッケージ・HBM周辺 | Amkor、TSMC、ASML、メモリ各社 | イビデン、TOWA、レゾナック、JX金属など | AI向け基板、後工程材料、HBM装置、設備投資 |
| AIソフト・サイバー | Palantir、CrowdStrike、ServiceNow | NEC、富士通、トレンドマイクロ、PKSHAなど | 継続課金、AI売上比率、利益率、海外展開 |

この中で、キオクシアに最も近い構造を持ちやすいのは、AIストレージ、光通信、冷却・電力、先端パッケージです。
理由は、米国で先に評価されたテーマが、日本企業の売上・受注・設備投資に比較的つながりやすいからです。
一方、AIソフトウェアは夢が大きいものの、米国企業と日本企業のビジネスモデルが違うことが多いため、比較には慎重さが必要です。
「情報差」をどう見るべきか
今回のテーマで大事なのは、米国と日本の情報差を「日本人投資家が遅い」と見ることではありません。
より正確には、こうです。
米国市場は、世界の成長テーマに最初に高い値札を付ける。
日本市場は、言語、開示、アナリストカバー、投資家層、流動性の違いによって、その値札が反映されるまで時間がかかる。
その時間差が、個人投資家にとってチャンスになることがある。
つまり、投資家の質というより、市場構造の違いです。
米国は期待を先取りしやすい市場です。
日本は数字を確認してから動きやすい市場です。
この違いを理解すると、「米国で起きたテーマを、日本株でどう表現できるか」という視点が持てるようになります。
ただし、後追い投資には大きなリスクもある
この戦略にはリスクもあります。
一つ目は、米国株が下がると日本株も下がることです。
米国で先に評価されたテーマは、米国で先に崩れることもあります。メモリ株、AI株、データセンター株は値動きが大きく、米国市場の調整が日本株に一気に波及する可能性があります。
二つ目は、すでに織り込み済みの可能性です。
ニュースで話題になった時点では、すでに株価がかなり上がっていることがあります。初心者ほど「すごいテーマだ」と思った時に買ってしまいがちですが、株価はすでにその期待をかなり織り込んでいる場合があります。
三つ目は、比較対象を間違えるリスクです。
米国の高成長企業と日本の低成長企業を単純に比較すると、割安に見えても実際には割安ではないことがあります。
四つ目は、業績サイクルです。
特にメモリは市況産業です。価格上昇局面では利益が急拡大しますが、供給が増えたり需要が鈍化したりすると、利益が急減することもあります。キオクシア自身も、将来見通しは為替や市場環境など多くの不確実性を含むと注意しています。
結論:次のキオクシアを探すなら、「米国の値札」と「日本の未評価」を比べる
キオクシアの急騰から学べることは、非常に大きいです。
cisさんが見ていたのは、単なる個別材料ではなく、米国市場で形成されたバリュエーションと、日本市場でまだ評価されていない企業価値の差だったと考えられます。
この考え方は、今後の日本株投資でも使えます。
見るべき順番は、次の通りです。
- 米国でどのテーマが強く買われているかを見る。
- そのテーマがなぜ買われているかを確認する。
- 日本企業で同じ需要を受ける会社を探す。
- その会社の決算・受注・利益率にテーマが表れているかを見る。
- 米国企業とのバリュエーション差が合理的か、過小評価かを考える。
- 決算、上方修正、海外IR、指数採用、米国上場などのカタリストを待つ。
日本株のチャンスは、単に「安い株」を探すことではありません。
世界で起きている大きな変化が、日本企業の利益にどう流れ込むかを見つけることです。
キオクシアは、その典型例でした。
そして次のチャンスも、米国市場のどこかで先に値札が付いている可能性があります。
その値札を見て、日本市場にまだ反映されていない企業を探す。
これが、初心者から中級者へ進む投資家にとって、非常に有効な視点になると思います。


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