AI相場の谷間で見直したい、筋の良い低位株5選【2026年6月23日終値】
今日の相場では、これまであまり動いていなかった低位株の強さが目につきました。
AI・半導体関連株の値動きが荒くなり、これまで相場を引っ張ってきたテーマに資金を置きにくくなると、投資家は次の投資先を探し始めます。その過程で、割安株や出遅れ株、低位株などに資金が向かうことがあります。
ただし、最初に大切なことがあります。
低位株は、必ずしも割安株ではありません。
株価100円の会社が株価1万円の会社より安いとは限りません。会社全体の価値は、基本的に「株価×発行済み株式数」で考えるからです。
また、「低位株」と「ボロ株」も厳密には少し違います。低位株には「株価500円以下」などの基準が使われますが、明確な統一定義はありません。一方、一般に100円以下の超低位株を「ボロ株」と呼ぶ場合があります。

今回は、単に株価が低い銘柄ではなく、
- 事業そのものに継続性がある
- 売上や利益に成長の兆しがある
- 業績予想に対して株価が割高ではない
- 株価が低い理由を説明できる
- 増資や継続的な赤字だけに頼った銘柄ではない
という条件で、500円以下の5銘柄を選びました。
AI相場が崩れると、なぜ低位株が動くのか
2026年6月上旬には、AI・半導体関連株を中心に世界的な調整が起きました。6月8日の日経平均株価は一時3,000円を超えて下落し、その前の米国市場でもエヌビディアが6%以上、AMDが10%以上下落し、半導体株指数も大きく下げました。
もっとも、現時点で「AI相場が完全に終わった」と判断するのは早いでしょう。市場関係者からは、AI投資の長期的な成長が終わったのではなく、過熱したポジションを整理する「健全な調整」との見方も出ています。
このように主役銘柄の値動きが不安定になると、資金が割安株、内需株、小型株、低位株へ循環することがあります。
相場格言でいえば、
人の行く裏に道あり花の山
という状況です。
ただし、この格言は「人気がない株なら何でも買えばよい」という意味ではありません。人が見ていない銘柄の中から、業績や財務に裏付けのある会社を探す、という意味で受け取るべきでしょう。
今回選んだ低位株5銘柄
株価と予想PERは、2026年6月23日終値を基準にしています。
| 銘柄 | 6月23日終値 | 100株の金額 | 予想PERの目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| NTT〈9432〉 | 144.2円 | 14,420円 | 約12.0倍 | 分割による低位株。安定型 |
| LIFULL〈2120〉 | 189円 | 18,900円 | 約12.8倍 | 不動産DXの再評価候補 |
| パーソルHD〈2181〉 | 237.1円 | 23,710円 | 約11.9倍 | 人材不足とAIマッチング |
| じげん〈3679〉 | 375円 | 37,500円 | 約8.5倍 | M&A型の割安成長株 |
| Sun Asterisk〈4053〉 | 414円 | 41,400円 | 約11.5倍 | AI時代のDX支援。高変動型 |
終値、会社予想EPS、BPS、配当予想を基に概算しています。
1.NTT〈9432〉
低位株だが、いわゆるボロ株ではない
NTTは、今回の5銘柄の中では最も安定性を重視した選択です。
株価は144.2円ですが、会社の経営状態が悪いために100円台になったわけではありません。NTTは2023年に1株を25株に分割しており、その結果として1株当たりの株価が低くなっています。会社側も、投資単位を引き下げ、幅広い投資家が参加しやすくすることを分割の目的としていました。
通信事業は成熟していますが、データセンター、法人向けIT、AI、次世代通信基盤「IOWN」などが中長期の成長分野です。
前期実績は売上高約14.4兆円、営業利益約1.71兆円。今期も売上高15.06兆円、営業利益1.71兆円を計画しています。一方、純利益は9,800億円と減益予想であり、完全な右肩上がりではありません。
6月23日終値を基準にすると、
- 予想PER:約12.0倍
- PBR:約1.21倍
- 予想配当利回り:約3.74%
です。
さらに、会社は16期連続となる増配と、上限2,000億円の自己株式取得を計画しています。
なぜ低位なのか
主な理由は25分割です。したがって、NTTは「業績不振で売り込まれた低位株」ではなく、株式分割で見た目の株価が低くなった大型株です。
注意点
国内通信事業の成長鈍化、巨額の設備投資、借入金の増加には注意が必要です。また、会社は従来の中期目標の達成時期を後ろ倒ししています。
初心者が最初に低位株を調べるなら、まずNTTのように「株価が低い理由をはっきり説明できる会社」から見るのがよいでしょう。
2.LIFULL〈2120〉
海外事業整理後の、不動産DX再評価候補
LIFULLは、不動産情報サイト「LIFULL HOME’S」を運営しています。
不動産会社から広告料や利用料を受け取り、住宅を探す利用者と不動産会社を結び付けるビジネスです。物件情報、利用者データ、不動産会社とのネットワークが蓄積されるほど、サービスの利便性が高まる点に強みがあります。
2026年9月期上期は、売上収益が前年同期比4.3%増の149億円、営業利益が28.5%増の約23億円でした。売上高の伸び以上に利益が伸び始めている点は注目できます。
同社はAIを使った住まい探しの案内や、物件情報の精度向上、社内業務の効率化も進めています。2026年度から2028年度に向けて、売上収益350億~400億円、営業利益55億~60億円を目標としています。
株価189円に対して、
- 予想PER:約12.8倍
- PBR:約0.89倍
です。
PBR1倍割れだけで割安とは断定できませんが、国内主力事業の利益成長が継続するなら、再評価の余地があります。
なぜ低位なのか
LIFULLは過去に海外事業を拡大しましたが、その後、海外事業の整理や撤退を進めました。前期には海外事業売却に伴う一時的な利益もあり、純利益だけを単純比較しにくい状態です。
海外展開への期待が後退したことや、不動産情報サイト間の競争が激しいことが、株価評価を抑えてきたと考えられます。
注意点
HOME’Sの利用者数だけでなく、不動産会社から得られる売上、広告宣伝費、営業利益率を確認する必要があります。
「PBR1倍割れだから買う」のではなく、国内事業の利益成長が本物かを四半期ごとに確認する銘柄です。
3.パーソルホールディングス〈2181〉
人手不足を追い風にする人材サービス大手
パーソルホールディングスは、人材派遣、転職支援、求人広告などを手掛けています。
日本では人手不足が続いています。一方で、企業と働き手を適切に結び付けることは簡単ではありません。パーソルは、保有する人材データと企業データをAIで分析し、求人と求職者のマッチング精度を高めようとしています。
前期は売上高が前年同期比7.2%増の約1兆5,558億円、営業利益が15.8%増の約665億円、親会社株主に帰属する利益が19.0%増の約427億円でした。
今期も売上高1兆6,650億円、営業利益710億円を計画しており、緩やかな成長が続く想定です。
6月23日終値237.1円を基準にすると、
- 予想PER:約11.9倍
- PBR:約2.41倍
- 予想配当利回り:約5.48%
です。
PBRは低くありませんが、利益に対する株価と配当利回りには割安感があります。
なぜ低位なのか
パーソルは2023年に1株を10株に分割しました。会社自身も、分割によって1株を200円台から購入できるようになると説明しています。
したがって、こちらも業績悪化だけで低位になった銘柄ではありません。
ただし、2026年6月2日、傘下のパーソルテンプスタッフなどが、人材派遣に関する独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会の立ち入り検査を受けたと発表しています。現時点では調査段階ですが、結論や業績への影響を確認する必要があります。
注意点
高い配当利回りだけを理由に買ってはいけません。
公正取引委員会の調査、企業の採用意欲、人材派遣の利益率を確認しながら、少額で追いかけるのが適切でしょう。
4.じげん〈3679〉
低PERだが、M&Aの管理能力を見極めたい
じげんは、求人、住宅、自動車、旅行など、人生のさまざまな場面に関わる比較・情報サイトを運営しています。
自社で新しいサービスを育てるだけでなく、企業を買収し、じげんの集客力やインターネット運営ノウハウを加えることで成長させるM&A型の経営が特徴です。
2022年3月期から2026年3月期までに、
- 売上収益:約153億円から約292億円
- EBITDA:約43億円から約76億円
- 当期利益:約23億円から約42億円
へ成長しています。
株価375円を基準にすると、
- 予想PER:約8.5倍
- PBR:約1.65倍
- 予想配当利回り:約3.6%
です。
今回の5社の中では、予想PERが最も低い銘柄です。
なぜ低位なのか
市場が警戒しているのは、M&Aへの依存と考えられます。
企業買収を続ける会社では、売上高は伸びていても、買収した企業が予定どおり成長しなければ「のれん」の減損が発生する可能性があります。また、買収を除いた既存事業の成長率が見えにくくなることもあります。
つまり、低PERには理由があります。
注意点
売上高だけでなく、
- 買収を除いた既存事業の成長率
- 営業キャッシュフロー
- のれんの金額
- 借入金
- 買収後の利益率
を確認したい銘柄です。
この点を理解したうえで見るなら、成長実績と割安感のバランスが比較的よい低位株だと思います。
5.Sun Asterisk〈4053〉
AIを敵ではなく、開発力を高める道具にできるか
Sun Asteriskは、企業の新規事業やデジタルサービスの企画、設計、開発を支援する会社です。
単なるシステム受託会社ではなく、ビジネス、デザイン、テクノロジーの人材を組み合わせ、サービスの企画段階から関わることを特徴としています。
AIによってプログラムを書く作業自体は効率化されます。一方で、「何をつくるか」「誰のどんな問題を解決するか」という企画力や設計力は、引き続き必要です。同社も、AI時代には「つくること」が一般化し、「何をつくるか」の重要性が高まると説明しています。
前期は売上高が過去最高となった一方、成長投資や一時的な費用によって利益が減少しました。今期は売上収益182億円、前期比22.7%増、営業利益17.1億円を計画しています。
株価414円を基準にすると、
- 予想PER:約11.5倍
- PBR:約1.44倍
- 予想配当利回り:約2.4%
です。
利益計画が達成されるなら、成長企業としてはそれほど高い評価ではありません。
なぜ低位なのか
上場後はDX関連の成長株として高い評価を受けましたが、その後、利益成長の鈍化によって成長株プレミアムが縮小しました。
また、生成AIは同社にとって成長機会であると同時に、従来のシステム開発単価を下げる可能性がある脅威でもあります。
注意点
今回の5銘柄では、最も値動きが荒くなりやすい銘柄です。
売上高だけではなく、技術者の稼働率、売上総利益率、大型案件の採算、借入金を確認する必要があります。初心者が最初から100株を買うよりも、1株から決算を観察するのに向いた銘柄でしょう。
低位株が動いた後には暴落が来るのか
結論からいうと、
低位株が上がったから、その後に必ず市場全体が暴落する、という法則は確認できません。
ただし、低位株物色が相場の終盤で起こることはあります。
大型優良株がすでに上昇し、割安な中型株も買われ、さらに投資家が短期間で大きく上がりそうな銘柄を探し始めると、最後に低位株や材料株へ資金が向かうことがあるからです。
低位株の上昇は暴落の「原因」というより、投資家のリスク許容度がかなり高まっていることを示す症状と考えた方が正確です。
個人投資家は、値動きが大きく、一度当たれば大きな利益になりそうな「宝くじ型」の株を好む傾向があり、そうした株は長期的には市場平均を下回りやすいという研究があります。
また、売買単位に関する研究では、1株当たりの価格が高いことが小口投資家の参加を妨げ、株式分割によって小口投資家の参加が増えることも確認されています。これは中国市場を中心とした研究であり、日本市場へそのまま当てはめることはできませんが、「見た目の株価が投資家行動に影響する」という点では参考になります。
日本の事例――2006年のライブドアショック
日本で分かりやすい事例が、2006年1月のライブドアショックです。
ライブドアは繰り返し株式分割を実施し、多くの個人投資家が参加していました。東京地検の家宅捜索をきっかけに大量の売り注文が発生し、東証の処理能力を超える懸念から、全銘柄の取引が途中で停止される異例の事態となりました。日経平均株価は2日間で約5.7%下落しました。
これは「低位株が上がると暴落する」という証明ではありません。
しかし、
- 個人投資家の売買が一つの銘柄に集中する
- 流動性があるように見えて、売りが集中すると買い手が消える
- 信用取引や短期売買が増える
- 悪材料が出ると、同時に逃げようとする
という条件がそろうと、個別株の問題が市場全体へ波及することを示す事例です。
相場格言では、
山高ければ谷深し
と言います。
これはAI関連株だけでなく、急騰した低位株にも当てはまります。株価が短期間で2倍、3倍になった後は、それだけ反動も大きくなりやすいという意味です。
昔は低位株の方が初心者に買いやすかったのか
この認識は、方向としては合っています。ただし、「昔は単元未満株が存在しなかった」という部分は少し修正が必要です。
日本では1995年に株式ミニ投資が始まり、通常の売買単位の10分の1で株を買える仕組みがありました。ただし、対象銘柄や注文方法などに制約があり、現在の1株投資ほど手軽ではありませんでした。
また、かつては1単元が100株、1,000株など銘柄によって異なっていましたが、2018年10月に国内上場株式の売買単位が100株へ統一されました。
現在は証券会社によって、原則1株から単元未満株を買うことができます。
昔は1,000株単位の銘柄も多かったため、
- 株価100円なら10万円
- 株価1,000円なら100万円
と、1株当たりの株価が必要資金に大きく影響しました。
そのため、低位株が初心者や資金の少ない投資家に選ばれやすかったという見方には合理性があります。
ただし、それだけで暴落が起こるわけではありません。暴落につながるのは、低い株価そのものではなく、過度な集中、信用取引、情報不足、流動性の低さ、業績と無関係な値上がりです。
初心者が低位株で大きく損をしないための5つの考え方
1.まず1株だけ買う
現在は1株から購入できます。
最初から100株買うのではなく、1株だけ保有し、一度か二度の決算を見てみる方法があります。株主になると、株価の動きだけでなく、決算資料も真剣に読むようになります。
2.一度に全額を投資しない
相場格言には、
二度に買うべし、二度に売るべし
というものがあります。
例えば10万円投資するつもりでも、最初は3万円、次の決算後に3万円、業績を確認して残り4万円というように分けます。
低位株は値動きが大きいため、最初から全額を入れる必要はありません。
3.成行注文ではなく指値注文を使う
売買が少ない低位株では、買いたい価格と売りたい価格の差が開いていることがあります。
成行注文を出すと、想定より高い価格で買ってしまう可能性があります。特に小型の低位株では、購入価格を指定する指値注文が基本です。
4.信用取引を使わない
低位株は現物でも十分に値動きがあります。
信用取引を使うと、株価下落による損失に加えて、追証や強制決済の危険が加わります。初心者が低位株を買う場合、少なくとも最初は現物取引に限定した方がよいでしょう。
5.1銘柄に資金を集中させない
例えば、低位株1銘柄への投資を運用資金の2%以内に抑えた場合、その株が半値になっても資産全体への影響は約1%です。
2%が絶対的な正解ではありませんが、低位株では「何倍になるか」より先に、「半値になったら資産全体がどれだけ減るか」を計算することが重要です。

まとめ――低位株は、株価ではなく理由を買う
株価100円の株が200円になるには、わずか100円上がればよい。
そう考えると、低位株は簡単に2倍になりそうに見えます。
しかし、100円から200円も、1万円から2万円も、必要な上昇率は同じ100%です。
重要なのは株価の桁ではなく、
- 利益が伸びているか
- 現金を稼げているか
- 借金や増資に頼りすぎていないか
- 株価が低い理由を説明できるか
- 市場が見直すきっかけがあるか
です。
今回の5銘柄を分けると、NTTは比較的安定型、LIFULLとじげんは業績再評価型、パーソルは配当と成長を両立させる候補、Sun Asteriskは成長性が高い一方で値動きも大きい銘柄です。
低位株物色は、次の主役を探す機会になることがあります。一方で、業績を見ずに株価だけで買う投資家が増えると、相場の過熱を示すこともあります。
落ちてくるナイフはつかむな。
そして、上がっているだけの株にも飛び付かない。
低位株は「安いから買う」のではなく、安く見える理由を調べ、それでも事業価値が上回ると判断できたときに、少額から買うものだと思います。
※本記事は2026年6月23日終値および記事作成時点の会社公表資料を基にしています。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。業績予想、配当予想、調査状況などは今後変更される可能性があります。

コメント