AI・半導体関連株の値動きが荒くなり、含み損を抱えている人も少なくないと思います。
こうした局面では、どうしても「AIの次は何が上がるのか」を探したくなります。
宇宙なのか。
防衛なのか。
レアアースなのか。
ロボットなのか。
もちろん、次の大きなテーマを早く見つけることには意味があります。
ただ、ここで一度立ち止まって考えたいことがあります。
AI相場で利益を得た人は、本当に「AIという言葉」を早く知っていたのでしょうか。
実際には、AIによって、
- 半導体の使用量が増える
- 高性能メモリが不足する
- データセンターが増える
- 電力設備が必要になる
- 冷却や配線がボトルネックになる
といった、現実の利益構造の変化を早く理解した人が大きな利益を得たのだと思います。
重要だったのは、テーマ名ではありません。
何が必要になり、どの会社の売上と利益が、どのように変わるのか。
そこまで考えた人が強かったのです。
今回は、銘柄名をあえて出しません。
銘柄名を出すと、「その株は今から上がるのか」という話に意識が寄りやすくなります。しかし、今回伝えたいのは、一つの銘柄ではなく、今後も繰り返し使える銘柄の探し方です。
「嫌われている業種」と「気づかれていない業種」は違う
割安株を探すとき、人気のない業種に目を向ける人は多いと思います。
自動車、化学、鉄鋼、銀行、建設、不動産。
PERやPBRを見ると、成長株よりはるかに安く見える会社もあります。
ただし、安いことと、気づかれていないことは同じではありません。
たとえば、自動車株が安い理由は、多くの投資家が知っています。
中国市場、EV投資、関税、為替、ソフトウェア競争、巨額の設備投資。
市場は自動車会社の強さを知らないのではなく、将来の不確実性を理解したうえで低い倍率を付けています。
これは「気づかれていない」というより、分かっていて割り引かれている状態です。
一方、本当に面白いのは、市場が会社を昔の業種名で分類したまま、その中で起きている変化を十分に評価していない場合です。
たとえば、市場からは「建設関連」と見られていても、実際には新設工事より、点検、診断、修繕、データ管理、運営受託の比率が増えている。
「廃棄物処理会社」と見られていても、実際には処理料を受け取りながら、重要金属を回収する資源供給会社へ変わっている。
「卸売会社」と見られていても、実際には技術提案、在庫、保守、法規対応まで担い、顧客の工程から外しにくい存在になっている。
ここには、業種名と利益構造のずれがあります。
市場が古い分類で見ているうちに、会社の中身が先に変わる。
このずれが、再評価の出発点になります。
株式市場に「いつか必ず評価される」はない
ここは重要なので、先に注意点を書きます。
どれだけ安く見えても、株式市場で必ず評価される会社はありません。
市場が会社の変化に気づかないまま、何年も低い株価が続くこともあります。
また、会社の中に良い技術があっても、
- 古い事業の赤字が大きい
- 設備投資に現金を使い続ける
- 利益を低採算の買収へ回す
- 株式を繰り返し発行する
- 株主還元を行わない
- 経営陣が事業の変化を説明できない
のであれば、株価が評価されないことには理由があります。
したがって、探すべきなのは単なる低PER株ではありません。
次の四つがそろっている会社です。
利益構造が変化している
変化が決算の数字に表れ始めている
生み出した利益が株主価値につながる
市場が見方を変えるきっかけがある
この四つがそろったとき、単なる割安株が「再評価される成長株」へ変わります。
今、見落とされやすい五つの領域
1.既存インフラの維持・点検・予防保全
最も注目しているのは、道路、橋、トンネル、上下水道、河川、港湾、工場設備などを、新しく作る会社ではなく、使い続けられるようにする会社です。
一般的には、建設、設備工事、建設コンサル、保守サービスなどに分類されます。
この業種名だけを見ると、
- 公共工事頼み
- 人手を使う
- 成長率が低い
- 地味
- 海外展開しにくい
という印象を持たれやすいと思います。
しかし、需要の中身は大きく変わっています。
国土交通省の推計では、事後保全から予防保全へ移行した場合でも、インフラの維持管理・更新には2019年度から2048年度までの30年間で約190兆円が必要です。年間費用も2018年度の約5.2兆円から、2048年度には約6.5兆円へ増えると見込まれています。壊れてから直す事後保全のままなら、2048年度の年間費用は約12.3兆円です。
これは、一時的な景気対策ではありません。
すでに存在している膨大なインフラを維持するため、長期間にわたって必要になる支出です。
しかも、作業は十分に進んでいません。
2023年度末時点で、地方公共団体が管理する道路橋のうち、早期または緊急の措置が必要でありながら、修繕が完了していない橋は約4万橋あります。現在のペースでは、予防保全へ移行するまでに約20年かかると試算されています。
さらに、市区町村の土木部門職員は2005年度から2024年度までに約13%減少し、技術系職員が5人以下の自治体が全体の約半数を占めます。国は複数の自治体や複数分野の維持管理をまとめる仕組み、民間委託、データ活用、新技術の導入を進めています。
ここで重要なのは、「公共事業が増える」という単純な話ではありません。
利益の出る場所が、
新しく造る
から
点検する、劣化を予測する、修繕する、運営する、データを管理する
へ移り始めていることです。
ドローン、管路カメラ、センサー、AIによる劣化予測、遠隔監視、設備管理システムなどを使い、少ない人数で多くのインフラを管理できる会社には、従来の建設業とは異なる評価が付く可能性があります。
2.都市鉱山・資源循環・難処理廃棄物
二つ目は、廃棄物を処理する会社ではなく、廃棄物から資源を供給する会社です。
電子基板、使用済み電池、廃触媒、廃液、汚泥、廃油、金属スクラップには、銅、金、銀、レアメタルなどが含まれています。
こうした会社は市場から「廃棄物処理業」と見られやすいのですが、実態は少し違います。
処理料を受け取りながら、有価金属を回収して販売できる会社もあります。
この事業には、
- 廃棄物処理の許認可
- 処理施設の立地
- 地域との信頼関係
- 回収・物流網
- 複雑な廃棄物を安全に処理する技術
- 回収した資源の販売先
- 大規模な製錬設備
が必要です。
単に「リサイクルを始めます」と発表して参入できる市場ではありません。
経済産業省も、一次資源の安定調達だけでなく、再生材を質・量・コストの面で安定供給できるサプライチェーンの構築を、経済安全保障と産業競争力の問題として位置づけています。国内で発生するリサイクル原料の多くが焼却・輸出され、製造業と再資源化事業者の連携が十分ではないことも課題とされています。
政府が目指しているのは、単なるごみ削減ではありません。
国内で資源を集める
品質をそろえる
金属を回収する
製造業へ戻す
必要に応じて海外の廃電子機器や廃触媒も処理する
という資源供給網です。
市場ではまだ環境関連の地味な業種として扱われていますが、政策上は、資源安全保障を支える産業へ変わり始めています。
3.技術商社・専門卸
三つ目は、総合商社ではなく、特定分野に強い技術商社や専門卸です。
卸売業という言葉には、商品を右から左へ流し、薄い手数料を得るだけの会社という印象があります。
しかし、実際には、
- 海外メーカーとの長期的な関係
- 国内での販売権
- 顧客ごとの仕様調整
- 法規・認証への対応
- 部品在庫
- 短納期での供給
- 導入支援
- 納入後の保守
まで担う会社があります。
顧客側から見ると、単なる仕入れ先ではありません。
設備を安定して動かすための一部であり、簡単には変更できない存在です。
こうした会社の強みは、特許のように見えやすくありません。
貸借対照表にも「30年間続く海外メーカーとの信頼関係」や「顧客の設備に合わせた技術知識」は載りません。
そのため、市場からは低成長の卸売会社として、PER10倍前後、PBR1倍前後で評価されることがあります。
ただし、技術商社なら何でもよいわけではありません。
仕入先が一社に集中し、契約を失えば事業が崩れる会社もあります。商品市況に利益が左右される会社もあります。
見るべきなのは、売上高よりも、
- 粗利益率が上がっているか
- 技術支援や保守の比率が増えているか
- 自社製品や独自サービスが育っているか
- 仕入先と顧客の双方から必要とされているか
- 特定の国策案件や成長市場で採用実績があるか
です。
4.規制産業の中で、質による集約が起きる会社
福祉、介護、医療周辺、保育などの規制産業は、投資家から敬遠されやすい分野です。
国の制度に依存する。
人手が必要。
報酬改定で利益が変わる。
不適切な事業者のニュースが出る。
こうした懸念には理由があります。
ただし、制度が厳格化されることは、すべての事業者に同じ逆風になるわけではありません。
実績のない小規模事業者には厳しくても、
- 利用者の成果が確認できる
- 職員を採用・教育できる
- 行政や医療機関から紹介を受けられる
- コンプライアンス体制を整備できる
- 新規出店の先行赤字に耐えられる
- 無借金または財務に余力がある
会社には、むしろ市場集約の機会になります。
市場が「公費を受け取る福祉会社」と一括りにしている間に、実際には、粗悪な事業者から実績のある運営会社へ利用者、人材、紹介案件が移っていく可能性があります。
この領域では、単純な利用者数ではなく、
利用者がどのような成果を得たか
その成果が次年度の報酬へ反映されるか
既存拠点の稼働率がどう変化しているか
を見る必要があります。
5.古い社名・業種名に隠れた高機能技術
最後は、業種というより会社の見方です。
日本には、
- 印刷
- 繊維
- ガラス
- 陶磁器
- 化学
- 金属加工
といった、古く見える業種名を持ちながら、実際には先端産業向けの重要技術を持つ会社があります。
たとえば、印刷で培った技術は、本や包装を刷るだけに使われるわけではありません。
微細なパターンを大量かつ均一に形成する技術は、半導体、電子部品、ディスプレー、認証、セキュリティなどへ展開できます。
繊維技術も、衣服だけではありません。
膜、フィルター、電子材料、医療材料、複合材料へ広がります。
陶磁器やガラスも、食器や建材だけではなく、電子部品、センサー、半導体製造、通信、医療などに使われます。
市場が古い事業の印象を引きずっている間に、高機能事業の利益比率が上がれば、会社全体に付く評価倍率が変わる可能性があります。
ただし、この分野は特に注意が必要です。
高い技術を持っていても、その事業が会社全体の売上の数%しかなければ、株価への影響は限定的です。
重要なのは、「その技術があるか」ではなく、
その技術の売上と利益が、会社全体を変える規模まで育つか
です。
古いラベルと新しい利益構造
| 市場が貼っているラベル | 実際に起きている可能性のある変化 | 確認したい数字 |
|---|---|---|
| 建設・設備工事 | 新設から点検、修繕、運営、データ管理へ | 維持管理売上、受注残、継続契約、利益率 |
| 廃棄物処理 | 処分から資源回収・供給へ | 処理量、回収金属量、処理料、資源価格感応度 |
| 卸売・商社 | 仲介から技術支援、在庫、保守へ | 粗利益率、独自商材、保守収入、仕入先集中 |
| 印刷・繊維・化学 | 成熟品から電子・医療・高機能材料へ | 高機能事業の売上比率とセグメント利益 |
| 福祉・医療周辺 | 人数依存から成果・品質による集約へ | 稼働率、成果指標、既存拠点利益、制度改定 |
この表で重要なのは、売上の増加だけではありません。
売上高が変わらなくても、利益率の高い事業の構成比が上がれば、営業利益は大きく増えることがあります。
反対に、売上高が20%増えていても、低採算の買収や人員増加によるものであれば、株主価値はあまり増えません。
決算書の中で「会社の呼び方」を変える
市場が会社の見方を変える前に、投資家自身が会社の呼び方を変えられるか。
これが、今回の中心的な考え方です。
「建設会社」ではなく、インフラ資産管理会社ではないか。
「廃棄物会社」ではなく、国内資源供給会社ではないか。
「卸売会社」ではなく、技術と物流を組み合わせた工程支援会社ではないか。
「印刷会社」ではなく、微細加工・情報セキュリティ会社ではないか。
ただし、想像だけで呼び方を変えてはいけません。
決算書で、次の変化を確認する必要があります。
売上構成が変わっているか
会社が成長分野を強調していても、売上の大部分が依然として成熟事業なら、会社全体への影響は限定的です。
利益構成が変わっているか
売上比率が小さくても、高い利益率を持つ事業なら重要です。セグメント利益と利益率を確認します。
一度きりの売上から継続収入へ変わっているか
保守、点検、更新、ライセンス、運営受託、消耗品などの比率が増えている会社は、利益の安定性が高まりやすくなります。
利益が現金になっているか
会計上の利益だけでなく、営業キャッシュフローが増えているかを確認します。
経営陣が変化を株主価値へつなげているか
不採算事業の整理、政策保有株の売却、自社株買い、増配、成長分野への投資など、資本配分も重要です。
「国策」「低PBR」「出遅れ」だけでは買わない
見落とされた領域を探すと、次のような言葉に出会います。
「国策銘柄」
「PBR1倍割れ」
「出遅れ」
「次のAI関連」
「世界シェア」
「唯一無二」
どれも魅力的に聞こえます。
しかし、これらは投資理由の入口でしかありません。
国策でも、予算が会社の受注へ届かなければ利益にはなりません。
PBR1倍割れでも、ROEが3%で余剰資産を活用しない会社なら、低PBRには理由があります。
世界シェアが高くても、市場規模が小さく、設備投資負担が大きければ、株主の利益は増えません。
見るべきなのは、言葉ではなく、
売上、利益率、キャッシュフロー、1株当たり利益が、実際に変わっているか
です。
次の成長株は、新しい業種から生まれるとは限らない
AI相場の後に、無理に「次のAI」を探す必要はありません。
本当に気づかれていない成長は、未来的な社名を持つ新興企業だけにあるわけではないからです。
建設、廃棄物、卸売、印刷、繊維、福祉。
一見すると古く、地味で、成長性が低そうな業種の中で、利益の取り方が変わり始めている会社があります。
新しい物を作る会社だけが成長企業ではありません。
今ある物を使い続ける会社、捨てられる物から資源を取り戻す会社、複雑な仕組みを支える会社も成長企業になり得ます。
市場が会社の看板を書き換える前に、決算書の中で、その会社の呼び方を変えられるか。
これが、今後の銘柄探しで大切になる視点だと思います。
Kabu100では、注目が集まった後のテーマだけでなく、まだ「成長産業」と呼ばれていない段階から、その変化を追いかけたいと考えています。
次回は、この中でも特に注目している、
上下水道・インフラ・工場設備の点検、運営、予防保全
を担う中小型企業について、需要の構造、参入障壁、利益の出方、注意すべきリスクを具体的に整理します。
※本記事は企業や業界の構造を研究するためのものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断は、各社の決算資料、有価証券報告書、適時開示などの一次情報を確認したうえで行ってください。

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