Kabu100目線で見る「期待」と「警戒」、そして長く研究したい5銘柄
AI相場は、いま世界の株式市場で最も大きなテーマになっています。
NVIDIAは2027年度第1四半期に売上816億ドル、前年同期比85%増、粗利率約75%という異常な強さを見せました。これは「いつか儲かるかもしれない」という夢ではなく、すでに巨大な利益が出ているという意味で、2000年前後のITバブルとは違います。
一方で、私はこの相場にはバブル的な側面もあると考えています。
Microsoftは2026年度第3四半期だけで319億ドルの設備投資を行い、その約3分の2がGPUやCPUなど短命資産向けだったと説明しています。Metaも2026年の設備投資見通しを1,250億〜1,450億ドルへ引き上げています。
つまり今のAI半導体ブームは、
AI需要が本物であること
+
巨大企業が競争上の恐怖から一斉に設備投資していること
の両方で成り立っています。
AIブームの「本物」の部分
AIそのものは、言うまでもなく本物です。
検索、広告、クラウド、ソフトウェア開発、金融、製造、医療、防衛、物流、電力、ロボットなど、AIが入り込む余地は非常に広いです。半導体製造装置についても、SEMIはAIアクセラレータやHPC向けの能力増強を背景に、世界の半導体製造装置販売が2027年に1,560億ドルへ達すると予測しています。
ただし、本物の技術テーマと、本物の株価リターンは別です。
インターネットは本物でした。
しかし、ITバブル時の多くのネット株の株価は本物ではありませんでした。
AIも同じ可能性があります。
警戒すべきポイント
一番警戒すべきなのは、半導体メーカー側ではなく、半導体を買っている側の投資回収です。
今はMicrosoft、Google、Meta、Amazon、Tesla系、OpenAI周辺などが、競争に負けないためにAIインフラへ巨額投資しています。しかし、どこかで市場はこう問い始めます。
そのAI投資は、本当に利益に変わるのか?
GPUは余っていないのか?
推論単価は下がりすぎないのか?
モデルの軽量化で必要な計算量は減らないのか?
今のGPU価格、メモリ価格、データセンター投資、半導体装置投資には、明らかに「取り合い」の価格が乗っています。ここが落ち着いた時、現在の利益率や株価倍率が維持できるとは限りません。
特に危ないのは、次のような銘柄です。
AIという名前だけで買われた銘柄
GPU特需を恒久利益として評価されている銘柄
AI SaaSだが、大手に機能を吸収されやすい銘柄
半導体サイクルの山を通常利益と誤認されている銘柄
逆に、長く残る可能性があるのは、AIの勝者そのものではなく、AIが普及するほど必要になる周辺領域です。
計算資源の節約
電力・蓄電池・需給最適化
サイバーセキュリティ
本人確認・デジタルID
現場データ・映像AI
Kabu100目線では、ここを探したいです。
すでに巨大化した企業の2倍3倍を狙うより、まだ時価総額が小さく、事業が本物化すれば10倍も見えてくる銘柄を探す。もちろん、10倍を狙う銘柄に完全な安心感はありません。だからこそ、「夢だけ」ではなく、既に売上・顧客・継続性があるものに絞ります。
Kabu100候補として研究したい5銘柄
1. グリッド 5582
電力・蓄電池・交通のAI最適化
グリッドは、AIを使って電力、交通、物流などの社会インフラの計画を最適化する会社です。電線を引く会社ではなく、電力会社やインフラ企業の複雑な計画業務をAIで最適化する会社です。
2026年6月期第3四半期累計では、売上高19.51億円、前年同期比28.7%増、営業利益3.1億円。電力分野が売上の5割超を占めています。
この会社の魅力は、AIブームの中でもかなり実需に近いことです。
AIデータセンターが増えれば、電力需要は増えます。
再エネが増えれば、電力需給は不安定になります。
蓄電池が増えれば、いつ充電し、いつ放電するかが重要になります。
その全部に「最適化」が必要です。
AIを動かすには電力が必要
電力が複雑化するほどAI最適化が必要
という二段構えのテーマです。
Kabu100としての魅力は、時価総額がまだ100億円前後と小さいことです。AI電力インフラの本命企業として定着できるなら、上値余地はあります。
ただし、弱点もあります。売上規模はまだ小さく、個別開発色も残ります。ストック型売上がどれだけ伸びるか、蓄電池事業が利益貢献するかは要確認です。
見るべきKPI
電力分野の売上成長
ストック売上比率
送配電・蓄電池案件の増加
利益率の改善
2. フィックスターズ 3687
AI時代の「計算資源を節約する会社」
AI相場ではGPUをたくさん買う会社が注目されています。
しかし、長期的には「同じGPUでより多く処理する」「AIモデルをより速く動かす」技術も重要になります。
フィックスターズは、計算資源を最大限に活用するソフトウェア最適化技術を持つ会社です。会社資料でも、AIモデルの推論処理と学習プロセスの両面で高速化を実現する高速化の専門集団と説明されています。
2026年9月期中間決算では、売上高54.42億円、前年同期比13.8%増、営業利益16.35億円、同8.8%増。通期予想も上方修正され、売上・営業利益とも過去最高を見込んでいます。
この会社の面白さは、AI半導体ブームの「危険性」に対するヘッジにもなることです。
もしGPU価格が高すぎるなら、企業は計算資源を効率化したくなります。
もしAI推論が増え続けるなら、推論処理の高速化が必要になります。
もしエッジAIが広がるなら、限られた計算資源でAIを動かす必要があります。
つまり、フィックスターズは「半導体をもっと買う」側ではなく、今ある半導体をもっと使い倒す側です。
時価総額はすでに800億円前後まであります。
そのため、グリッドのような小型感はありません。ただ、AI高速化・量子・自動運転・半導体ソフトウェアの複数テーマを持ち、なおかつ黒字で財務も良い点は、Kabu100候補として研究する価値があります。
見るべきKPI
AI高速化案件の増加
SaaS・IP型収益の比率
半導体・自動運転向け案件の継続性
営業利益率の維持
3. セーフィー 4375
現場データを握るクラウドカメラ企業
AIが本当に現実世界に入り込むなら、必要なのはデータです。
特に、店舗、工場、建設現場、介護施設、物流拠点のような「現場データ」は価値があります。
セーフィーは、クラウド型映像プラットフォームを展開する会社です。カメラメーカーではなく、カメラを通じて映像データをクラウド化し、AIやアプリで現場業務を改善する会社です。
2026年12月期第1四半期では、売上高が前年同期比20.9%増、売上総利益が28.4%増。リカーリング収益は36.9億円、前年同期比21.5%増とされています。
さらに、ARRは149億円、課金カメラ台数は37万台まで伸びています。
この会社の魅力は、AIそのものではなく、AIに使わせる「現場の目」を持っていることです。
カメラが増える
映像データが溜まる
AIで異常検知・人流分析・作業記録・介護見守り・店舗管理ができる
顧客単価が上がる
という流れです。
AI SaaSの多くは、機能が大手に吸収されるリスクがあります。
しかし、セーフィーの場合は、現場に設置されたカメラ、施工、保守、既存顧客、映像データの蓄積があるため、単なるソフトウェアよりは参入障壁があります。
弱点は、まだ利益成長の確認が必要なことです。現時点ではARRと課金カメラ台数は強い一方、株価は黒字成長株として完全には評価されていません。
見るべきKPI
ARR成長率
課金カメラ台数
AIソリューション売上
リカーリング粗利率
黒字化の継続性
4. サイバーセキュリティクラウド 4493
AI時代の攻撃増加に備えるWeb防衛インフラ
AIが普及すると、攻撃側もAIを使います。
脆弱性探し、フィッシング、攻撃コード生成、自動スキャン、なりすまし。
AIの普及は、企業にとって生産性向上であると同時に、攻撃者にとっても武器になります。
サイバーセキュリティクラウドは、クラウド型WAF「攻撃遮断くん」や、AWS WAF / Azure WAFの自動運用サービス「WafCharm」を提供する会社です。WafCharmはビッグデータをもとにAIが最適なシグネチャを自動判別・自動運用するサービスとされています。
2026年12月期第1四半期は、売上高13.9億円、前年同期比17.5%増、営業利益3.6億円、同50.6%増。ARRは51.9億円です。
この会社の良さは、AI相場の裏側にある「防御需要」に乗れることです。
AIによってWebサービスやクラウド利用が増える。
通信量が増える。
攻撃も増える。
WAFや脆弱性管理の必要性が高まる。
実際、会社はAIの発展により脆弱性公開から攻撃発生までの時間が短縮しており、WAFによる仮想パッチが「時間を稼ぐ」現実解になると説明しています。
時価総額も200億円前後で、Kabu100候補としてはまだ小さい部類です。
弱点は、売上成長率が爆発的ではないことです。10倍を狙うには、国内WAF企業から、クラウドセキュリティ・脆弱性管理・海外展開を含む広いセキュリティ企業へ変わる必要があります。
見るべきKPI
ARR成長率
WafCharmの従量課金成長
海外ARR比率
営業利益率
新サービスの立ち上がり
5. ELEMENTS 5246
AI時代の本人確認・デジタルIDインフラ
AI時代に意外と重要になるのが、本人確認です。
生成AIでなりすましが簡単になる。
詐欺が高度化する。
金融、通信、行政、EC、暗号資産、チケット、シェアリングサービスで本人確認が必要になる。
この流れの中で、eKYCや顔認証、パスキーなどの需要は長期的に増える可能性があります。
ELEMENTSは、オンライン本人確認サービス「LIQUID eKYC」や、顔認証、パスキー認証などを展開する会社です。2026年11月期第1四半期は、売上高12.91億円、前年同期比80.6%増、営業利益1.19億円で黒字転換しました。
会社資料では、LIQUID eKYCの好調や、ポラリファイのPMIが順調に進んでいることが業績に寄与したと説明されています。
この会社はリスクも高いです。
まだ通期で安定黒字化したとまでは言い切れず、M&A後の統合、本人確認市場の競争、金融機関依存、規制対応などもあります。
ただ、Kabu100目線では面白いです。
本人確認は、AIが進むほど必要になる「信頼のインフラ」です。
AIで画像や声や文章が偽造される時代には、「この人は本当に本人か」を判定する仕組みがより重要になります。
時価総額は180億円前後で、まだ小型です。
事業が本人確認・認証・デジタルIDのインフラとして定着するなら、10倍を夢見る余地はあります。
ただし、5銘柄の中ではリスクは高めです。
見るべきKPI
eKYC件数
金融機関・大企業の導入数
営業利益の黒字継続
ポラリファイ統合効果
本人確認以外の認証サービス拡大
5銘柄の位置づけ
本命度が高いが小型リスクあり
・グリッド
質が高く、AI効率化の本命候補
・フィックスターズ
現場データの蓄積に価値がある
・セーフィー
AI時代の防衛インフラ
・サイバーセキュリティクラウド
夢は大きいが確認事項も多い
・ELEMENTS
私なら、安心感で並べるなら、
フィックスターズ
サイバーセキュリティクラウド
グリッド
セーフィー
ELEMENTS
成長余地・Kabu100感で並べるなら、
グリッド
ELEMENTS
セーフィー
サイバーセキュリティクラウド
フィックスターズ
です。
まとめ
AIブームは本物です。
しかし、今のAI半導体株のすべてが長期で正当化されるとは思いません。
特に、GPU価格、メモリ価格、データセンター投資、AI SaaSへの過剰期待には注意が必要です。
Kabu100目線で狙うなら、AIの中心そのものよりも、AIが普及するほど必要になる周辺を見たいです。
AIを動かすための電力
AIを安く速く動かす高速化
AIが見る現場データ
AI時代のセキュリティ
AI時代の本人確認
このあたりは、まだ完全には市場が評価しきっていない可能性があります。
ただし、10倍を狙う銘柄に完全な安心はありません。
だからこそ、夢だけではなく、既に売上・顧客・継続収益・実績がある会社を選び、決算ごとにKPIを確認する必要があります。
AI相場で一番危ないのは、「AIだから買う」ことです。
一番面白いのは、「AIで社会が変わる時、どこに必ずお金が流れるか」を考えることだと思います。

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